この文書の所在
Junkieta.netLog → Column, 2004-06-21

「座り読みご遠慮願います」について

  1. 本屋での座り読み
  2. 書店という空間
  3. くつろげる本屋さん
  4. 指摘を受けての補足

本屋での座り読み

最近、「座り読みはご遠慮願います」という類の張り紙を本屋でよく見かける。「立ち読み」ではなく「座り読み」を断るメッセージをわざわざ店側が出す、ということを考えると、妙な気分になる。「邪魔になるかも」とか「買わずに読み続けるのは失礼かも」とか、そんなことを気にする小心者の僕には、通路を大きく占拠する「座り読み」など考えもつかない。僕自身はそんなに「座り読み」の現場を見たことはないけれど、張り紙があるということは、あえて言わねばならないくらいの迷惑が、実際に店側にかかっているのだろう。

でも、少し考えてみたいところもある。「座り読み」は確かに迷惑だろうが、何かをきちんと読みたい時は姿勢くらい「だらだら」したい。こういう気分もわからなくもない。清算前の商品を「迷惑をかけずにだらだらしながら読める場所」なんてものを用意した本屋はそうそうないことだし。あまり居心地よくしていたら皆買わずにそこで読んでしまう、という反論もあるかと思うが、それは「一度読んだら満足する程度の本だからじゃん」という考え方もできるわけだ。

書店という空間

そこで書店の経営事情については立ち入らないで、あえて思いついた希望だけを述べてみる。僕だったら、狭い通路を占拠して「座り読み」するよりも、料金を払ってもいいから美味しいコーヒーと煙草の吸える場所で読みたい、と思う。「それは単なる漫画喫茶じゃねえか」という考えは至極もっともだが、漫画喫茶の本は買えない。買うための前段階として、その本と自分の思考の相性を占う場所としての条件を本屋が持っていてくれればうれしいなあ、と感じるのだ。

僕は一人でも友人とでも、外に出た時は本屋で色々な本を見たりぱらぱらとめくったりしながら時間を潰すのが好きだ(おかげで彼女には「あんたはデートをわかっちゃいない」みたいなことを言われる)。そのとき一番いい気分をさせてくれるのは面白そうな本に出会えた場合なのだが、他にも要因はある。店側の書いた本に対する手書きのコメントを読み、その本に共感できた時などがそれだ。一つの作品を通じて、誰かの抱いた感動と自分の抱いた感動が通じ合うものに思えた時、と言えばいいかもしれない。そういう時は、書いた人に僕もその本のコメントを伝えたくなる。

くつろげる本屋さん

もしも本屋内のくつろぎスペースが実現したなら、こうした喜びが発生する可能性も上がるかもしれない。店と客だけでなく、匿名同士であっても客と客の関係がそこでできて、誰かのコメントにまた誰かがコメントし…というような。インターネット上の掲示板で可能なことが、本屋にできないとは言い切れない。むしろ、そことはまた違ったコミュニケーションの形が生まれうるのではないか。そうすれば客の在り方までもがその店の一つの個性として認知されうる。これも面白いと思う。

「座り読みはご遠慮願います」よりも、「座り読み」をしてもよく、したくなるような本屋。そんなものが生まれてくれれば、もっと楽しい生活ができそうな気がした。

指摘を受けての補足

すでに何人かの方から指摘を受けていた点について(いまさらながら)補足しておきます。喫茶店を設置している本屋さんは少数派ではあるものの、各地に存在しているようです。僕自身はいまだに直接行くことができていないので、ここであーだこーだと書くことはできません。それもあって、今まで書かずにいたのですが、さすがに時間切れかな、と思って報告した次第です。

実在してくれているのは何よりです。なんとか行ってみたいと思いますし、これからもそうした本屋さんが増えてくれると僕みたいな人間には喜ばしい限りです。お勧めの喫茶・本屋なんかあったら、皆さんも是非連絡をください。場所はどこでもかまわないです。機会があった時に想いだして行って見たいので。よろしくです。

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published:2004-06-21, updated:2004-08-18