「ポップ・コミュニケーション全書」所収の論文。出版は13年前になる。でも、非常に素直に面白い、と思えた。
個人的にもっとも関心をひきつけられたのは、ビデオゲームという体験の「日常化」について言及している点。ファミリーコンピュータの大ヒットによって、ビデオゲームが「敷居の高い」ものでなくなっていく過程の描写などは、自分でも詳細に考えていきたいテーマだな、と。
またドラクエ-共有空間との出会い
で行われている、「プレイヤー同士の共有できる空間としてプレイ経験が構築される」という議論は、今でも充分検討に値するだろう。ビデオゲームを通じたプレイヤーサイドの文化の在り方を考えるのに、いい下敷きとなる。
そして「インタラクティブ」という、今では当たり前に使われすぎている語を「やりとり」と訳し、意味を限定して文章に組み込んでいる箇所はとても好感が持てた。
少し色々手持ちの資料を再検討してみたくなってきた。Googleの検討する書籍検索法に似たやり方をして、自分で文献のリストを作ってみようかと思った。
中沢新一著「ポケットの中の野生」を読了。タイトルからも推測可能ではあるが、これは「ポケットモンスター(以下、ポケモン)」の分析を中心とした書籍。少なくとも、一時期大量に溢れたポケモン分析本より力の入った論評がされていると感じる。ただし解釈の図式を示す1・2・3章は冗長に過ぎ、ページをめくるのがだるかった。
正直な感想を言って、本書は「ゲーム論」としては難点が多いものだと思う。前半部で特に理由を示すこともなく「インベーダーゲーム」をゲームの「はじまり」としてあっさり置いてしまうあたり、ビデオゲームの成り立ちそのものに対する造詣はあまり深くないこともわかる。中心となるポケモン論においても、他のゲームソフトとの比較の上での検証がなく、それがポケモン固有の特徴であるか疑問も多い。まあこのあたりは中沢氏がゼビウス以来ポケモンで久しぶりにはまった、というプレイ経験の少なさに由来するのかもしれない。
しかし何より突っ込んでおくべきと感じたのは、中沢氏が「子ども達」という語を用いすぎていること。自身もポケモンにはまった一人でありながら、なにゆえ「子どもたちにうけたゲーム」という位置づけを執拗に用いるのか。フロイトの無意識に関する議論やレヴィ・ストロースの「野生の思考」を「子どもにとって」という話にしてしまうのは氏の本意なのか。中でも学校教育の均質化云々を混ぜて語る箇所などは、あまりに性急な結びつけに思える。そこがもっとも不満な点だった。「子ども」という単語を「プレイヤー」とか「ゲーマー」に置き換えればだいぶ違和感も減るように思うのだが。
と、いやに否定的だが、実のところ僕は本書をけっこう高く評価している。
ビデオゲームに関してなんらかの体系的な記述を試みた人ならたいていわかっていることだと思うが、日本におけるビデオゲーム研究はかなり閑散とした状況にある。特に人文・社会科学的なアプローチを目指した書籍はごくわずかであり、分析の視点そのものが整理されずにいる。中沢氏は既存の学問の体系の中でビデオゲーム体験を位置づけようとした。ポケモンのプレイにおいて実現されうる「野生の思考」に関する記述、通信によって実現されうる「贈与」の解釈、それらは確かに学際的なつながりをもった読み解きに思えた。
そして彼が「野生の思考」的な側面、現代社会に忘れられている(と考えうる)感覚をビデオゲームに見出し、求めている点。ゲームデザイン論と呼ばれる分野の研究には、参考になる記述もそれなりにあるが、それらは工業生産的な需要を満たすためのものになってしまいがちで不満だった。脳科学的な「快」の発生に論拠を求めたりして、「刺激量」でゲームデザインを語る道は工業生産の論理になっていく。プレイヤー側が見る「夢」を体系化しようとする、プレイヤー視点の研究がありうることを本書は思わせてくれた。
以上、簡単な読書メモ。僕も残された大学生活で社会的・文化的存在としてのゲームプレイヤーを見据えた研究を追求していきたい。
18禁ゲーム界隈は自分がほとんどやったことがないのもあって、情報収集をさぼっていたのだけれど。ゲーム関連のキーワードでググりまくっていてアリスソフトの配布フリー宣言を見つけた。まったく知らなかった。そんなことをしていたとは驚き。中古販売撲滅とキャンペーンを張ってきた業界団体とはスタンスをずいぶんと異にしている。
またアリスソフト - Wikipediaの解説によれば、ユーザ自身でも新たにゲームの開発が行える可能性を与えている
とのこと。しかしこのことに関するリファレンスは見つからなかった。昔ゲーム開発者にあこがれながらもツクールシリーズで挫折した経験のある身としてはこういう試みが気になってしょうがないのだが。
ふと気になったのだけれども、RPGとかSLGなどといったゲームジャンルってのはいつごろから作られ出したのだろう。ゲーム雑誌でカタログ的にゲームの紹介を並べる際、内容紹介欄を縮めるために考案されたのではないかという気もするが、ユーザーが勝手に名付けて口コミで広がったものとかもありそうだし、大手中古ショップとかが始めたのかもしれないし。
とりあえず以下思いついたものと、ググってわりと簡単に出てきたものを備忘録的に列記してみる。
こうしてみると、そもそもジャンル間の関係が親子か並列か迷ってしまうようなものも多い。というか、どれもジャンルと言えてしまいそうな割に、いつごろから誰がどういうふうに使い始めた名前かわからないものがたくさんある。特に「なになにADV」だとか「ふにゃららRPG」なんてのは便宜的につい使ってしまうけど、全然出自がわからない。これは調べてみた方がいい気がする。
などと言っていたら毎日新聞のゲームクエストにジャンル名についてのコラムがあったのを発見。そーか、メタルギアソリッドは「タクティカル・エスピオナージ・アクション
」だったのか…。わからん。
なおこのテーマに関してCritique of games | メモと寸評にてリファレンスが。多謝。
最近別のWebサーバー借りて実験的に始動させたプロジェクトの更新がおっつかない。やれることが極端に増えて、借りる前に立てたサイト構想自体を練り直したりしているせいだけれど。しかし始めてしまったものは更新も適度にやってかないと(なにせ個人利用でないものになっていくのが前提)なので、脳内がせわしない。
で、こっちの更新は卒論のネタとかを適当に上げつつやっていこうかと。長文系の文書も最近あまり作ってないので、個人的な思索や調べもののまとめとか。
しかし忙しい気分の方があれもこれもやる気になれるのは僕だけの性質か、それともみんなそうなのか。程度にもよるのか。